ジョイアススクールつなぎを始めて、12年目を迎えました。歴史をふり返れば、妻と二人で決起して始めたものの、右も左もわからない出発に、神戸・大阪・京都・札幌・福岡の各先輩事業者の過大なご助力をいただきました。その後の10年も全国のなかまに支えられて今があります。本当にありがとうございました。
「ジョイアススクール」とは、文字通り「陽気な学校」です。みんなが明るく陽気に過ごせることを大切にしています。「つなぎ」は、「人をつなぎ、地域とつながり、未来へつなぐ」をスローガンとして、みんなをつなぎたい気持ちから「つなぎ」としました。福祉の制度の事業所ですが、中身は特別支援学校を卒業した人たちの『大学(専攻科)』です。ただ、大学のような科学の最前線を追求する研究は難しいので、学ぶことのエッセンスを感じ、青春を謳歌し、主体的に学べるようにしている学校です。利用者を「学生、及び1回生~4回生」と呼んでいます。
スーツ姿の入学式に始まり、イベントでのパフォーマンス発表、キャンプ、自分の地元を案内するイベントなど、主体的に力を発揮する場がいくつもあります。2回生の終わりには、自分づくりの仕上げである『テーマ研究(好きなこと調べ)発表会』(100人規模のホテル会場)を乗り越え、修了証書の授与を受けます。修了旅行も自分たちで計画し、目的地になかなか到着できないなどのハプニングを経験し「何とかする力」を育んでいきます。そして、その後の2年間は、就労への移行期として作業的な学習や職場実習を経験し、やがて自分で「働く決心」をして社会にでていきます。
これまでいろいろな活動や実践を積み上げる中で、学生一人ひとりが人間的に大きく成長する姿に出会いました。支援者同士の会話では、いつも「○○さんは変わってきたなあ。」「すごく伸びてきたなあ。」と言い合うことが多くあり、一番うれしいことです。今もこの姿勢は変わりませんし、私たち支援者全員がこの喜びのためだけに一所懸命働いているのだろうと思います。
たっぷりと時間をかけ、自己決定することがトコトン尊重され、自分づくりをしていく環境、すなわち人格の成長を促すような環境は、知的や発達障害、精神障害を持つ方々に、なかなか整えられていません。『人格』とは彼らの存在そのものを指すのであり能力ではありません。人格の成長とは存在そのものが尊ばれ、それぞれが悩みながらももっと楽しく生きたい、もっとかしこくなりたいという意欲が飛躍的な力を生み、人格を成長させ完成させていくのでしょう。そういう『時間のプレゼント』ができる環境を提供することこそが大事なのだろうと思います。
その意味でこの学校の『支援員』の仕事は、学生たちが青春を楽しめるように応援することが第一の支援です。悩みがあれば一緒に悩み、やりたいことがあれば実現にむけて一緒に考える、バカげたことに全力を注ぐことも多くあります。つまり、常に学生の主体性を重視する支援が仕事です。だから、上からの指導ではなく、学生の目線で一緒に解決策を探していくことが必要です。粘り強く学生の育ちを待ちながら、成長をいっしょに喜べるスタッフが集まっていることにより、トコトン待てる実践が成立しています。
高等部卒業後すぐに「働く」のか、たくさん遊んで「青春を楽しんでから働く」のかの違いは明確です。キャリア教育が全盛の時代、「バカげたことに全力で取り組む」という選択肢はあまり大事にされているとは言えません。簡単にいうと彼らのもっと楽しく生きたい、青春を謳歌したいという気持ちが大事にされていないと思います。
日本が2014年に批准した国連の障害者権利条約第24条(5)に「他の者と等しく、高等教育、職業訓練、成人教育及び生涯学習を享受する」とあります。これからは公教育による高等教育(専攻科や大学教育など)や、生涯学習を保障しなければなりません。しかるに文部科学省は、今の養護学校の上級に専攻科をつくる方向にはなかなか動いていません。むしろ、私たちが運動で増やしてきた『学びの場』を応援するという立場をとっています。今後もっともっと国や文科省に働きかけていく必要があります。
ジョイアススクールつなぎは、昨年度10周年を迎え、『記念冊子』をまとめることができ、11月に全国専攻科(特別ニーズ教育)研究会会長の國本真吾氏(鳥取短期大学教授)を迎えて、多くの保護者の参加のもと、「今後の10年を考える学習会」を開催することができました。10年の節を超えていよいよ次の夢に向かう時がきたと思います。
学生たちが社会に出ていろいろな形で働くようになり、一段落したように見えますが、むしろここからが大事です。働き続けるためにも休日に友だちと遊ぶことや、恋愛やデートも大事だと思います。結婚したいと願う人も多くいます。しかし、そのための支援体制は、全くと言っていいほどできていません。大人同士の付き合いをするためにセクシュアリティに関する学びの機会も大事です。旅行やスポーツ観戦にいくにもなかなか大変です。こういう支援体制の広がりが次の夢だと思います。これからも「学ぶ権利」に「青春を楽しむ権利」、「生涯学ぶ権利」をにらんだ権利拡大の運動を、実践を積み重ねながら広げていきたいと思います。今後ともご賛同いただけるみなさんのご協力とご支援を続けてよろしくお願い致します。
Greeting
ご挨拶
ジョイアススクールつなぎ・ジョイアススクールspace
代表 阪東 俊忠
代表 阪東 俊忠
About
法人について
2013年設立 一般社団法人
みやこいち福祉会
次の事業を運営しています。
・ジョイアススクールつなぎ 専攻科:自立訓練(生活訓練)事業
・ジョイアススクールつなぎ かち創造科:就労移行支援事業
・ジョイアススクールつなぎ:就労定着支援事業
・ジョイアスらいふ:共同生活援助・短期入所事業
・相談支援事業所とびら:特定相談支援・障害児相談支援事業
・つながりかふぇ:カフェ経営
2021年設立 合同会社 羽ばたき
次の事業を運営しています。
・ジョイアススクールspace:生活介護事業